アイルランド語手探り学習の旅

未知なるアイルランド語を自力で解読してみようというブログ

手探り学習10日目-二人称と三人称の現在形

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今回のまとめ
  • 「決して~ない」は"ní VSO "riamh"
  • 二人称/三人称単数は主語を省略しない
  • 二人称/三人称単数現在は語尾に「アン」か「イオン」をつける

「決して~ない」

今回は前回後回しにした例文を解いてみようと思う。
確か、三人称単数形の否定文だった気がする。

よし、さっそく例文を見てみよう。

Ní insíonn sé bréag riamh.
彼は決して嘘をつかない。

簡単な例文だ。
分かるところから考えていこう。

まず、"Ní"は否定。「つかない」の「ない」に当たるだろう。次に、アイルランド語の直接目的語を取る構文は「V(述語)S(主語)O(直接目的語)」だったので(第六回参照)、初めの"insíonn"が動詞だろう。そして、その後ろの"sé"が主語だ。

残る"bréag"と"riamh"だが……、推測するに、「嘘」と「決して」だと思う。

V(述語)S(主語)O(直接目的語)の順番からいくと、"bréag"が「嘘」だが、副詞は途中に割り込んでくることもあるので何とも言い難い。
とにかく調べてみよう。

辞書で"bréag"と調べると、「嘘」と出た。
やはりそうだ。
前回見た"an t-alcól"と同じで、どうやら定冠詞がついた場合には変形するらしい。定冠詞がつくと、"an bhréag"と、間に"h"が入る。へえ。

活用の下の方に動詞の活用も書いてあったので、「噓をつく」という動詞にもなるらしい。一人称単数現在形は、"-aim"くっつけ型の"bréagaim"だった。

発音は「ブレーグ」。"á"「オー」といい、"úll"「ウーゥ」の"ú"といい、アクサン・テギュ「’」のついた母音は伸ばすのだろうか。

続いて"riamh"。意味は……「決して」。
思った通りだ。

発音は「リアフ」。しかし、若干「ディアフ」にも聞こえるのは何だろう。

英語だと、「決して~ない」は"never"だけで、"not"はなしで使うのだが、アイルランド語ではそうでもないらしい。
"riamh"は"ní"とセットで使うようだ。

「決して~ない」は頻繫に使いそうなので、ここで結論づけておこう。
"ní VSO "riamh"
だ。

三人称単数現在

さて……例文の"insíonn"だが、三人称単数の現在形だろう。
意味はおそらく、「(噓を)つく」。言うとか、そういう系統だと思われる。それとも「嘘」専用の動詞だろうか。

辞書で調べてみると……む、原形が分からないぞ。

三人称単数の現在は全く活用を解き明かしていないので、どこがどう活用しているのか分からない。
これは先に三人称単数現在形を解明した方がいいかも知れない。

と、いうことで、急遽三人称単数現在の活用を解明する。

まずは見知った動詞の三人称単数現在を調べてみよう。
以下の動詞は、これまでに出てきた基本的な動詞だ。

"féach"「見る」 "féachann sé"
"ól"「飲む」    "ólann sé"
"úsáid"「使う」 "úsáideann sé"
"can"「歌う」    "canann sé"

おお……。

こう見ると、原形に"ann"をつけているものがほとんどのようだ。例外は"úsáid"の"úsáideann sé"だけ。おそらくは語調の調整だろう。

辞書の活用表で目に入ったのだが、二人称単数の現在も同じ活用だった。
これは楽でいい。

しかし、一人称単数と違ってちゃんと主語も書いてあるのは、省略してはいけないということなのだろうか。 

ちょっとGoogle翻訳に寄り道してみる。
日本語で「彼は飲む」と入力してみると……

Ólann sé.

やはり、二人称単数、三人称単数は主語を省略してはいけないらしい。

さて、元の道に戻って、もう少し三人称単数現在の活用を見てみよう。

"rith"「走る」   "ritheann sé"
"aithin"「知る」  "aithníonn sé"
"iarr"「尋ねる」  "iarrann sé"
"labhair"「話す」   "labhraíonn sé"
"taispeáin"「見せる」 
"taispeánann sé"

うん……。やはり"ann"をつけるだけとはいかないか。

しかし、よーく見るとそれぞれに一人称単数の現在活用と似ている点がある。
ちょっと一人称とも比較してみよう。

 一人称    三人称
"rithim"     "ritheann sé"
"aithním"     "aithníonn sé"
"iarraim"      "iarrann sé"
"labhraím"      "labhraíonn sé"
"taispeánaim" "taispeánann sé"

ほう。
ちょっとひとつずつ見ていこう。

"rith"は、上述の"úsáid"「使う」と同じ活用をしている。一人称でも同じ"-im"くっつけ型だ。もしかしたら、"-im"くっつけ型は二人称/三人称単数では"-eann"くっつけ型になるのかも知れない。

"aithin"はどちらも"aith"と"h"の間の"i"が消えている。"i"が消えてから"íonn"がついているようだ。
おや……。
これは、今回の例文の"insíonn"に似ているぞ……?

"iarr"は、"-aim"と"-ann"。もしかしたら、これが一つの型なのだろう。

"labhair"の現在形は謎の変化だが、三人称単数でも同じような変化をしている。これは第八回↓に解き明かした、「4.語尾が"-ai+子音"型」だった。この型は皆、同じような変形をするのかも知れない。

irish-study.hatenablog.com

"taispeáin"は一人称も三人称も同じく、地味に最後の"i"が消えている。しかしそれだけで、後は"-aim"と"-ann"でおんなじだ。

先に発音を……と思ったが、三人称単数の発音単体なんて載ってない。

むぅ……。せめて一つでもあれば、どうせ他のも同じなのに……。

……と思って"ól"「飲む」やら"iarr"「尋ねる」なんかの短い動詞を調べていると、三人称単数現在形の発音が、あった。あ、そうか、三人称単数だけでなく、二人称単数でもあるのか。ならあってもおかしくない。

"ólann"は、「オーラン」。"ann"はどうしたって「アン」らしい。
"iarrann"は「イアラン」だから、二人称単数と三人称単数の現在形は、おおかた原形に「アン」をつければいいらしい。よし。

結論。
アイルランド語の二人称/三人称単数現在は、語尾に「アン」とつける
だ。

ん? いや、まだ結論じゃない。

最初の"insíonn"を忘れていた。
これは、"aithin"「知る」の"aithníonn sé"や"labhair"「話す」の "labhraíonn sé"と形が似ている。この類の原形だろう。

それっぽい単語を辞書で調べてみたが……だめだった。

やはり憶測では原形は分からないか。

色々試行錯誤してみた結果、Google翻訳に"insíonn"と打つと、「伝える」と訳された。

それから辞書に行って「伝える」と調べると……
あった。
"inis"だ。

"inis"「教える、物語る」。発音は、「イニッシュ」。"sh"の発音らしい。

"insíonn"の発音は「インシオン」。かなり変形しているが、最後の"íonn"は「イオン」と読むようだ。

ということは、二人称/三人称単数現在には「アン」と「イオン」の二種類の語尾があるのか。

さっきの結論を訂正しよう。
アイルランド語の二人称/三人称単数現在は、語尾に「アン」か「イオン」とつける
だ。 

ちなみに、一人称単数現在形は"insím"「インシム」だった。

今回もかなり長くなってしまった。
しかし、二人称単数現在と三人称単数現在が同時に解明されたのでよしとしよう。
もう少し記事を簡略化するか。

◆今日のフレーズ◆ Caife コーヒー
Tae お茶、紅茶

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