手探り学習1日目ー主格1人称単数形
突然だが、『The Best Is Yet To Come』という曲をご存知だろうか。
『The Best Is Yet To Come』―― かの、メタルギアソリッドの名曲中の名曲。
主に登場人物が死の覚悟をした時にかかる、神秘的な曲だ。
この曲、タイトルは英語だが、残念ながら歌詞自体は英語ではない。調べてみたところ、アイルランド語だという。アイルランド語……。
いい曲だし、フレーズも耳に残るから、歌ってみたい。
でもアイルランド語……。
言語を本格的に学ぼうとすると、それなりにお金がかかる。大学で英語とフランス語とスペイン語をやった私には分かる。参考書もそうだし、辞書だって必要だ。他人から学ぼうとすれば、なおさらだろう。独学するにも、最低でも一万円は初期費用がかかる。
しかし、そもそも言語というのは習得するのにお金などかかるはずのないものだ。必要があればこそ、話せるようになる。本来そういうものだ。
それに、お金をかけて学ぶというのも、およそ習得したとは言えない英語やフランス語、スペイン語と同じ末路を辿るに決まっている。理屈を学んで、文を組み立てる日本の学習法だ。私はこの学習方法に常々疑問を抱いて来た。
日本の言語教育は文法が先行している。読み書きばかりに時間をさく。しかし、言葉を話せて、それを文に起こせる方がいいに決まっている。言語の成り立ちを考えても、順序が逆なのだ。
……と、少し脱線したが、要するにお金をかけて言語を学んだって結果は見えている。だったら自分で模索しようという話だ。
幸い、私には多少多言語の学がある。それに、今やあらゆる言語のテキストがインターネット上に落ちている。無料の辞書だってあるにはある。
かつての言語の天才シュリーマンは、現地で雇ったネイティブにその言語の朗読を聞かせ、間違いを指摘してもらうことを繰り返すだけでその言語を習得したという。
流石にそこまでではないとしても、アイルランド語の文章の単語ごとの意味を調べて、文法を推測していけば、いけるんじゃないか……。
前置きが長くなったが、そういう訳でアイルランド語を手探りで学習してみようと思い立った。
ちなみに、アイルランド語は母国アイルランドでもほとんど話されなくなったという、消滅危機言語だ(アイルランドの学校では必須科目ではあるらしいのだが)。そんな訳でアイルランド語を初歩から学ぼう、というサイトは見つからなかった。
あったらどれだけ楽だったか……。
1日目は、とりあえず、一つでも分かる単語を覚えられるようにしよう。
目標は、メタルギアソリッド『The Best Is Yet To Come』を自分で訳して歌えるようになること。
一人称の発見
まず、インターネットで簡単なフレーズ集を検索してみる。
ありがたいことに、参考になりそうな記事が一つ出てきた。
このサイトで紹介されている文の中から少しずつ、手探りで文法を見出していこう。
とにかく一つでも分かるものが欲しい、と思って原文と訳を見比べていくと、なんとなく「わたし」っぽい単語を見つけた。
Tá me go maith. 元気です。
英語やフランス語、スペイン語では"me"は「わたしを」という目的語だ。同じインド・ヨーロッパ語族なら、似たような単語であるに違いない。
と、まあ目星をつけておいてインターネット上で無料の辞書を探す。
案外簡単に見つかった。
辞書で調べてみると、確かに"me"は「私」と出たが、それ以上には書かれていなかった。代わりに、似たスペルとして"mé"が出てきた。
すると、"mé"の項には例文が出るわ出るわ。
なるほど、これが主格一人称単数形なんだな。
あからさまに基本的すぎる文が例文として出てくる。
例えば、
Is dochtúir mé.
私は医者です。
おお、この一文だけでも多くの情報を得られる。すごいぞ。
明らかに英語の辞書の"I"の項目にありそうな文だ。単語三つだけということで、なんとなく各単語の意味が分かる。ふむふむ……。
でも疲れたので今回は終わり。
次回はこの一文を分析していこう。
文法、訳、発音など、間違いを見つけたらぜひご指摘いただきたい。
また初歩中の初歩のような情報でも、先達からの情報は非常に有益なので、どんなことでもお気軽にコメントをどうぞ。
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手探り学習まとめ①
第1回~第10回まとめ
前回、ちょうど手探り学習が第10回を迎えた。
区切りがいいので、ここらでこれまでに判明した文法をまとめておこうと思う。
そうしておかないと自分で分からなくなってしまう。
では、まず基本中の基本の文法を一つにまとめよう。主語、文型、そしてアイルランド語の基本ルールだ。
- 一人称単数の主格
mé 私 tú 君 sé 彼 sí 彼女 - 文型
- 「私は~だ」
Is ~ mé.
ex.) Is dochtúir mé. 「私は医者だ」 - 目的語をとる文型
動詞-主語-目的語(VSO)
ex.) Úsáidim mé an ríomhaire. 「私はそのコンピューターを使う」 - 否定文
Ní+動詞
ex.) Ní scríobhaim litir. 「私は手紙を書かない」
- 基本ルール
一人称単数現在形は、基本的に主語を省略する。
ただし、二人称、三人称はその限りではなく、また未来形についても一人称を含む主語の省略はない。
こうして見ると、なかなか重要な事が解明されている。特に、目的語をとる場合のVSOが解き明かされたのは非常に重要なことだろう。
では、次に動詞の活用をまとめていこう。
- 一人称単数現在形
発音……おおかた、動詞の原形に「イム(イン)」
活用語尾……
パターン1 原形+"-aim" パターン2 原形+"-im" 語尾が"-igh"型 原形の"gh"を消して+"-m" 語尾が"-ai"+子音型 原形の最後の子音を"a"の前に持って行って+"-aim"
パターン1
déan déanaim 「作る」
パターン2
creid creidim 「信じる」
語尾が"-igh"型
gráigh gráim 「愛する」
語尾が"-ai"+子音型
codail codlaím 「寝る」 - 二人称/三人称単数現在形
発音……おおかた、動詞の原形に「アン」か「イオン」
活用語尾……解明中だが、一人称で"-aim"型だったものは"-ann"をつけると思われる。また、「イオン」は"-ionn"と綴る。 - 現在進行形
Tá 主語 ag 動名詞
ex.) Tá mé ag ithe úll.
「私はリンゴを食べています」 - 一人称単数未来形
発音……不明。
活用語尾のひとつ……原形+"faidh"
動詞の方は、まだまだ探索の余地がありそうだ。動詞の解明にはかなりの労力を有するが、そこまで躍起になることはない。極論を言えば、パターンなど解明する必要はないのだ。その時々に出会った動詞の活用を調べていけば、自ずとパターンが見出せる。だから、あまり力む必要はない。
では、最後に、紆余曲折あった冠詞、そして発音についてのまとめだ。
- 冠詞
- 発音
á オー th ハ行 ca カ co コ cé ケ l ゥ
冠詞については名詞が出てくる度に話題になるので、知らず知らずのうちに法則が解明されていく。定冠詞の影響で名詞が変形するという現象には驚いたが、"alcól"というスペルを見るに、名詞が母音で始まる場合に起こるのかも知れない。
発音はまだまだ踏破には程遠いが、これまでに出てきた単語で法則が見出せそうな発音はいくつか発見しているので、次回あたりにでも再調査してみよう。
今回のまとめは以上だ。
流石に10回分ともなると、少しはまともな分量になる。また第20回を迎えた頃に、それまでの成果をまとめてみるとしよう。
文法、訳、発音など、間違いを見つけたらぜひご指摘いただきたい。
また初歩中の初歩のような情報でも、先達からの情報は非常に有益なので、どんなことでもお気軽にコメントをどうぞ。
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