アイルランド語手探り学習の旅

未知なるアイルランド語を自力で解読してみようというブログ

手探り学習9日目-否定文と定冠詞つきの名詞

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今回のまとめ
  • 「~しない」は、V(述語)の前に"ní"を置く
  • "an t-alcól"のように、定冠詞がつくと形の変わる名詞がある

否定文の構成

さて、今日はどんな探索をしようか。

毎回、例文を見つけるのに辞書とGoogle翻訳を使い分けているのだが、これがなかなか面白い。辞書とGoogle翻訳、それぞれ違う面白さがある。

辞書は、自分のまだ知らない文法や単語で溢れかえっている。自分に理解不能なこと、あるいは、もの凄く興味を引かれるもの。自分の分かりそうな和訳を見ても、全く解読できないとこもある。それもまた楽しい。

Google翻訳は、もちろんのこと自分の狙った文が出てくる。アイルランド語を少しでも理解できているようで嬉しい。しかし、意図した訳とは違う文が出てくることもある。なぜそうなるのか、どこを変えれば意図した文が出てくるのか、それを考えるのもまた一興だ。

例えるならそう、モンスターハンターで言うならば、まさに探索とクエストといったところだ。

……。

まあ、本屋で歩き回って本を探すのと、お目当ての本を読むみたいな感じだ。
どちらも特有の面白さがあるだろう。

さて……、今日は、そうだな、ふらっと否定文の探索でもしてみるか。

~文、と言われるのは肯定文以外では否定文と疑問文くらいのものだ。あ、いや、命令文もあるか。感嘆文もあるか……。

……とにかく、今日はアイルランド語の否定文を解明しよう。

初めの一歩は、どうしようか。Google翻訳に頼んでみるか。

ということで、Google翻訳に否定文を入力してみる。
せっかくなので、前回新しく覚えた動詞にしよう。"scríobh"「書く」でいいか。

目的語に手紙も加えて日本語を入力すると、こう出てきた。

Ní scríobhaim litir.
私は手紙を書かない。

ほう。

いい塩梅だな。

ただの現在形の文なので主語は省略されているが、確か"scríobhaim"の後に入るのだ。"scríobhaim"は"-aim"くっつけ型の現在形。それからまあ、"litir"は辞書を引く必要もないか。明らかに「手紙」だろう。という訳で、否定文の要素は"Ní"のみだ。

安易な推測をすれば、動詞の前に"ní"を置けば否定形になるのだろうか。

とその前に、"ní"の発音は「ニー」だった。伸ばすらしい。

辞書で"ní"を調べると、「ない」と出てきた。
まあ、そうだろう。

辞書の例文でもだいたい文の頭に来ている。
アイルランド語の文型はV-Sの順番だったので、やはりV(述語)の前に"ní"を置くのだろう。

"t-"の謎

辞書の"Ní"の項目には例文もたくさん出てきたので、短い例文を少し頂戴しよう。

Ní ólaim an t-alcól.
私は酒類は飲まない。

Ní insíonn sé bréag riamh.
彼は決して嘘をつかない。

初めて「私」以外の主語を持ってきてみた。例文も「私」ばかりある訳ではないのだ。しかし、やはり動詞が知らない活用をしているな。

とりあえず上の例文だ。先ほどの例文とを見比べる限り、やはり否定文にするには動詞の前にní"をつければいいらしい。スペイン語は動詞の前に"no"をつけるので、スペイン語に近いか。

"ólaim "は前にやった。"ól"「飲む」の現在形だ。"-aim"くっつけ型。簡単だ。
"an"は確か、定冠詞と予想している単語だった。「酒類全般」という意味なので、定冠詞がついているのだろう。英語と同じか。

そこまでは分かるのだが……アルコールらしき"alcól"についている"t-"は何だ?

"t-alcól"全体でアルコールという単語なのだろうか。うーん、辞書で調べてみるか。

辞書で"alcól"と調べると、普通に「アルコール」と出てくる。やはりこれがアルコールという単語なのだろう。では、問題の"t-"は何だろう。

"alcól"ページを見ていると、折りたたまれて文法事項が書いてあることに気がついた。動詞であれば活用が載っているところだが……なぜ名詞に?

見てみると、あった。
"t-alcól"が。

どこにあったかというと……、Nominativeの欄。
Nominative、私も分からなかったが、どうも「主格」という意味らしい。

いや、例文の"t-alcól"は主格ではないが。
と思ったが、他の格には所有格や、更には「与格」とかいう未知の格しかない。アイルランド語には目的格がないのか……。ならまあ納得するしかない。

それからなぜか、辞書の"t-alcól"の前にはご丁寧に"an"までついている。今まで無視していたが、実は"alcól"としか書いていないNominativeもある。
なんだこれは。

二つのNominativeの上には、"Bare Forms"と"Forms with the definite article"と題されていた。"bare"は「剥き出しの~」とかいう意味だったか。"definite article"は......調べてみると、「定冠詞」だった。おお、図らずも"an"が定冠詞であることが証明されてしまった。

どうやら、主格(例文では目的格なのだが……)の"alcól"に定冠詞をつける時には"t-alcól"にしなければならないらしい。英語には、定冠詞の有無で形の変わる名詞はないな。フランス語も……ない。そうするくらいなら冠詞の方が変わる。

だがしかし、格で形が変わるのは、英語にはある。普通名詞なんかを所有格にするには、名詞に"~'s"をつけるのだ。"mother's ~"のように。こっちは確かに、"t-alcól"の変化に似ている気がする。
フランス語にはこのような所有格化はない。全て後ろから、"~ de 名詞"とする。"de"は英語の"of"のようなものだ。英語でもこの言い方は健在だろう。

少し脱線したが、とりあえずこれでアルコールの例文は全て解き明かすことができた。
最後に、もう一度確認しよう。

Ní ólaim an t-alcól.
私は酒類は飲まない。

 "Ní"は否定、"ólaim"は一人称単数現在の「飲む」、"an"は定冠詞で、"t-alcól"は定冠詞つき主格の場合の"alcól"「アルコール」だ。

そういえば、発音を忘れていたが、記事の前半に出てきた"litir"「手紙」は「リチャー」、"alcól"は「アゥコーゥ」だった。「リチャー」は謎だが、「アゥコーゥ」はほぼそのまま読めるだろう。

長くなってしまったので、もう一つの例文は次回にしよう。
知らない言語には知らない文法があるものだ。

◆今日のフレーズ◆ Tuigim 分かります
Ni thuigim 分かりません

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