アイルランド語手探り学習の旅

未知なるアイルランド語を自力で解読してみようというブログ

手探り学習4日目ー現在進行形と冠詞

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今回のまとめ
  • 現在進行形は、"Tá 主語 ag 動名詞"
  • 不定冠詞はない(かも知れない)

現在進行形らしき構文

nemo アイルランド語

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前回紹介したこのアプリ、とても面白い。
簡単な単語や指示代名詞、疑問代名詞も載っている。ありがたい限りだ。

名詞の隣に「男」だの「女」だの書いてあるのは、おそらく名詞の性なのだと思う。

英語には名詞の性というのはないが、フランス語やスペイン語にはある。性別とはあまり関係なく、ただ名詞を区別するためにあるのだろう。その証拠に、同じ名詞でも言語によって性が違う。スカートだったか窓だったか、フランス語で女性名詞のものがドイツ語では男性名詞らしい。

名詞の性、といえば、アイルランド語に冠詞はあるのだろうか。

ヨーロッパの方にはだいたいあるみたいだが、日本語にはない。しかしアイルランド語インド・ヨーロッパ語族だから、ある気がするのだが。

それを確かめるために、辞書で何かしらの名詞を引いてみる。
冠詞で代表的な名詞といえば……アッポーか。

辞書で「リンゴ」と引いてみる。

出た。

そりゃそうだ。

アイルランド語では"úll"と言うらしい。別のサイトで発音を確認すると、「ウーゥ」。最後の小さい「ゥ」は"L"の発音か。

リンゴの例文を見てみると、こんなものが出てきた。

Tá mé ag ithe úll.
私はリンゴを食べています。

どうせならもっと冠詞の分かりやすい文にして欲しかった。

しかし、私にはちょっとこの文、見覚えがある。最初に"mé"と引いた時に似たような例文がいくつも出てきた。
例えば、

Tá mé ag féachaint ar an teilifís.
私はテレビを見ています。

や、

Tá mé ag ól bainne.
私は牛乳を飲んでいます。

共通点が分かるだろうか。

そう、現在進行形だ。そして、原文の中にも同じ文構造が見られる。

それは、"Tá mé ag 〜"だ。

"mé"は「わたし」だった。テレビの例文は長くてよく分からないが、リンゴと牛乳の例文は酷似している。
もし、"Tá 〜 ag"が現在進行形を作る構文なのなら、そのあとに続いている2単語がそれぞれ、「リンゴ」「食べる」、および「牛乳」「飲む」のいずれかのはずだ。

……と、その前に、最初の答えが出そうだ。
冠詞と思しき単語は……ない。

まあ、それは置いておこう。
今は現在進行形に専念しよう。 

Tá mé ag ithe úll.    私はリンゴを食べています。

さて、リンゴの例文だが、リンゴの単語は"úll"だったので、残る"ithe"が「食べる」に相当する単語のはずだ。

と、ここまで来てようやく辞書を引いてみる。"ithe"……

ない。

しかし、"ith"まで打って「食べる」という単語が出てくる。
どうやら"ithe"はこれの活用形のようだ。

辞書には活用も出てきた。ありがたい。
活用の下の方を見ると、verbal nounに"ithe"があった。

verbal noun……動名詞だ。

動名詞……今回のテーマ、現在進行形にぴったり合う活用形だ。素晴らしい。まるで完全にはまったパズルピースのようだ。やはり同じ語族同士、英語との共通点もあるということか。

これでアイルランド語の現在進行形が解明できた。

結論。
アイルランド語の現在進行形は、
Tá 主語 ag 動名詞
となる。

"tá"と"ag"が何を示すのかは不明だ。

※補足……
念のため他の主語の例文を探してみたところ、
Tá sé ag cur.  雨が降っている。
というのを発見した。
"sé"は「彼、それ」という意味のようなので、"mé"以外の主語でも"Tá〜sé"のまま使えるようだ。
それから発音だが、"tá"は普通に「タ」、"ag"は「アグ」だか「エグ」だかに聞こえる。中間音なのかも知れない。

例文の解読

さっき出た例文、放り投げるのも何なので、辞書を使いながら解き明かしていこうと思う。

まず、牛乳の例文だ。

Tá mé ag ól bainne.
私は牛乳を飲んでいます。

判明したばかりの現在進行形の構造から推測すると、"ól"は「飲む」の動名詞だろう。という訳で、"bainne"は「牛乳」だ。

辞書……うん、あってる。

発音は「バーニャ」。謎だ。

"ól"の方は「オゥ」だった。やはり"L"は英語のような「ゥ」らしい。

さて、続いてもう一つの長いテレビの例文。

Tá mé ag féachaint ar an teilifís.
私はテレビを見ています。

文構造から言って、"féachaint"が「見る」の動名詞だろう。しかし、ちょっと長くて発音が難しそう。

「テレビ」 だが……どう見ても"ar"や"an"ではない気がする。むしろ、"teilifís"が非常にテレビっぽい……。

調べてみた。
テレビだった。

最後に、"ar"と"an"だが、調べたところ、"ar"は「上」「乗る」。要するに英語の"on"みたいなものか。「見る」を調べてみると、"féach"が出てきて、ほぼ"ar"と一緒に使われていた。"féach"は"ar"とセットで使うらしい。

"an"は「その」「あの」。もしかしてこれ、冠詞か?

経験上、訳に入ってこない「その」は冠詞だ。"the"しかり、"le","la"しかり。指示代名詞なら必ず訳されるはずなのだ。

なんとタイムリーな。
今回の初めに冠詞はなさそうだと言っていたのに、終盤になって判明するとは。

しかし、リンゴや牛乳の例文には冠詞らしき単語はなかった。これは確かだ。現在進行形の動詞に、直接くっついていた。
(だから楽だと思ってたのに......)

それがテレビにはある......となると、考えられることは二つだ。

一つは、いわゆる不定冠詞がなく、定冠詞だけ存在するということ。

不定冠詞とは英語の"a/an"であり、なんというか、リンゴや牛乳の例文みたいな時に使う冠詞だ。フランス語ではさらに部分冠詞という区別もあり、不可算名詞には部分冠詞をつける。リンゴには不定冠詞、牛乳には部分冠詞、といった具合に。
定冠詞は、まあ、"the"だが......。話し手も聞き手も知っているものにつく。日本語でも多用されているが、使い方が限定されている気がする。

不定冠詞だけないというのは少し不可思議に感じるが......そうか。英語では複数形の名詞には不定冠詞をつけないのか。
そういえばそうだ。

言い方を変えれば、英語には不定冠詞の複数形がないという意味だから、よくよく考えるとそちらの方が不可思議だ。
そういえば不可算名詞にも不定冠詞がつかないのか。

スペイン語でも英語と同じく不可算名詞に不定冠詞がつかない。しかし、英語と違って"unos","unas"という不定冠詞の複数形はある。

となると、フランス語が最もレパートリーが広いのか。確かにフランス語は冠詞が発達した言語と言われている。定冠詞もあるし、不定冠詞もあるし、部分冠詞もある。しかもすべて複数形ありときた。大学で4年間フランス語をやっていた私には、もはやフランス語の冠詞感覚が上位に来てしまっている。

しかし、フランス語の冠詞は複数形が男女で同形だ。スペイン語では上記のように男性形と女性形とで分かれているから、安易にフランス語が最も発達しているとは言えないか。

......なんだかすごく話が脱線してしまった。

つまるところ、アイルランド語には定冠詞しかないのではないか、ということだ。

考えられる二つ目、それは前置詞とセットの場合のみ冠詞が出現する、ということだ。

これは少しトリッキーなので一つ目の方が有力だが、可能性としてはある。
つまり、前置詞のあとの名詞には冠詞が必要、という可能性だ。この場合、前置詞のあとなら不定冠詞も存在するかも知れない。

まあ、例文が少ないのでなんとも言えないが。

もう少し例文の解読を進めていけば不定冠詞も出てくるかも知れない。今後の続報に期待だ。

そういえば発音だが、「見る」の原形"féach"は「フェーフ」らしい。「フ」というか、私にはフランス語の"r"の発音と同じように聞こえた。空のうがいをするような、喉の奥に引っかける音だ。
動名詞の"feachaint"は「フィフント」っぽいが......個人的な問題かも知れないが、男性の低い声ってちょっと聞き取りづらい。若干「フィフィント」っぽくも聞こえる。
"ar"は「アル」、"an"は「アン」だったので、短い単語はそのまま発音すればいいかも知れない。
「テレビ」"teilifís"は「テレフィッシュ」だ。間違いない。

今回はちょっと冠詞に熱が入ってしまった。
適宜読み飛ばしてくれて構わない。

ご参考程度に。

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